公益社団法人 仙台青年会議所 広報誌 のぞみ

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公益社団法人 仙台青年会議所
広報誌 のぞみ

『絶対に風化させてはいけない。』

3.11キャンドルナイトを主催している高校生連携協議会の尾関めいさん(仙台星稜高校2年生)は、強い決意を言葉にするとともに、来年の3月11日を真っ直ぐに見据えていました。

 

3.11キャンドルナイトは、全国・全世界から様々な支援を受けたことに対し、感謝の気持ちを発信するとともに、2011年3月11日に発生した東日本大震災を風化させないようにすることを目的に、2012年3月11日から仙台青年会議所が主催者となって開催してきました。

3.11キャンドルナイトの始まりから現在の姿までを浮き彫りにするため、2012年に企画運営を行った協働連携特別会議の議長を務めており、現在3.11キャンドルナイト実行委員会副代表を務める河合良紀先輩、3.11キャンドルナイト実行委員会代表金ヶ崎政伸先輩、高校生連携協議会のメンバーに取材をさせていただきました。

<河合良紀先輩>
【3.11キャンドルナイト始動】

〇どのような発想で開催に至りましたか。

東日本大震災が発生し、全国・全世界から様々な支援を受けている中、仙台JCとしても震災復興支援事業に取り組むべきと考え、何ができるのかを理事メンバー一同協議し、模索していました。そうした中で、仙台市長から当時の理事長に対し、勾当台公園を利用した事業を実施できないかとの相談がありました。そこで、阪神淡路大震災を経験している神戸JCに相談したところ、キャンドルのアイデアをいただき、仙台におけるキャンドルナイトの事業が始動しました。

 

〇開催にあたりどのような困難がありましたか。

東京JCからいただいた寄付金がありましたので予算は心配なかったのですが、2011年末頃にキャンドルナイトを行うことを決め、2,3か月の間に、企画し実行できるのか不安に感じるメンバーも多くおりました。当然お祭りではなく、多くの人にとってご親族の命日となる日です。神戸の真似をすればいいという話でもなく、竹でのキャンドルなど多くのアイデアをいただく中で、どのように鎮魂と風化防止の意味を込めていくかということにとても悩みました。少なくとも、電球でなく、火を灯したいという想いは、メンバーで共有できていました。

たまたまではありますが、幸運にも、キャンドルナイトの事業を実施する協働連携特別会議のメンバーには、多種多様な事業を行っている人員が揃っていました。商社のメンバーには、様々なサンプルの紙コップの組み合わせの中から、適切な紙コップを選別してもらうことができました。設計事務所のメンバーには、キャンドルの図面を書いていただき、当社の印刷会社でメッセージ用の型紙を作り、建設会社のメンバーには写真撮影のための足場を組んでもらいました。メンバー一人ひとりができることをやっていこうという信念で一丸となって取り組んだことが形となり、紙コップの仕様はいまでも変わらず受け継がれています。

 

〇3.11キャンドルナイトを開催するにあたってどのような想いがありましたか。

 鎮魂の想いと、感謝の想い、そして、風化させてはならないという想いがありました。

 3.11キャンドルナイト当日は、本当にあっという間でしたが、3月11日14時46分に、勾当台公園に実際に足を運んで、皆が共感できる場所になり、今でも代々続いているということから、本当にやってよかったと思っています。

 

〇3.11キャンドルナイトの意義をどのように考えていますか。

 過去は変わらないですが、未来に同じ想いをする人をどれだけ減らせるかに尽きると思います。防災減災のために、3.11キャンドルナイトは途絶えさせてはいけないと思っています。

<金ヶ崎政伸先輩>
【仙台JCの事業からの独立】

〇どのような経緯で仙台JCの事業であった3.11キャンドルナイトを引き継ぐことになったのでしょうか。

 2012年から2016年までの5年間にわたり、仙台JCの事業として3.11キャンドルナイトを実施してきましたが、仙台JCとしての役割は十分に果たされたのではないかと議論されるようになり、また、これまで東京JCからいただいた寄付金を資金として事業を実施してきましたが、2016年の事業で寄付金を使い果たしていました。そこで、3.11キャンドルナイト事業を終了するか、もしくは他団体に譲渡する方向で議論が進んでいきました。そうしたところ、当時3.11キャンドルナイトの運営に関わっていた高校生連携協議会のメンバーから、3.11キャンドルナイトの事業を継続していきたい、私たちがキャンドルナイトを引き継ぎたいと、熱い想いを打ち明けられ、高校生連携協議会を中心とした3.11キャンドルナイト実行委員会を結成し、仙台JCから、3.11キャンドルナイト事業を引き継ぐことになりました。

 

〇どのような想いで、3.11キャンドルナイト事業を続けようと考えたのでしょうか。

 東日本大震災を風化させてはいけないと思いますし、3月11日に仙台市の中心部にて皆が鎮魂の想いを寄せられる場所は必ず必要だと私は思っていましたので、迷いはありませんでした。

ただ実際に続けていくには、どのような形式で仙台JCからバトンを受け取り、責任の所在や事業資金をどうするかなど問題が山積みであり、私がJCを卒業する時の卒業同期の方々に相談し、皆で何十時間も様々な議論を重ねて、事業継続の方法を探っていきました。

 

〇事業を続ける上での困難をどのように乗り越えたのでしょうか。

仙台青年会議所の卒業同期を中心に後輩の方々、また、仙台市の防災環境都市推進室の皆様や仙台市教育委員会学びの連携推進室歴代室長の皆様、防災・減災円卓会議のメンバーはじめ、各メモリアル交流館スタッフ等、大勢の方々より事業に対するご理解とご協力をいただけたことで、あらゆる困難を乗り越えていくことができました。でも一番はキャンドルナイトメンバーが親身になって寄り添ってくれていることと、高校生たちの熱い想いを目の当たりにしていると、全然困難を困難と思わないですよね。そして何より私たちは現役時代にもがき、苦しみながらも不連続の連続の困難を乗り越えるトレーニングをしているわけですからね。

 

〇仙台JCが主催していた事業の変化として、工夫した点はありますか。

 事業目的を明確にして設営(手法)をシンプルにすることで、この後、誰にでもキャンドルナイトのバトンを渡せるようにと工夫しました。それに伴い、事業規模や予算の見直しでしたり、卒業した連携協議会の子たちのOB・OG会の設立など持続可能な事業となるように日々変化しております。

【高校生連携協議会との関わりについて】

〇高校生連携協議会の発足の経緯等を教えてください。

 2012年、震災の翌年に私が青少年育成事業担当の委員長で、そのターゲットが高校生でした。震災からの自立を目的に、復興に向けて自分たちは何ができるかをサミット形式で色々な学校から約50名参加し、いろいろ議論した結果、「コミュニケーションの大切さ」が採択されました。そして、引き続きコミュニケーションの大切さを仮設住宅で暮らしている方々に発信した事業を企画し、その実施に向けて約5カ月間高校生たちが調査研究しました。10月に仙台市立立町小学校の校庭と体育館をお借りして、約300名の高校生が集まり、仮設住宅の方々をお招きし、食、運動、遊び等いろいろなツールを使ってコミュニケーションの大切さを発信しました。そこで最後に、その高校生たちが本事業を通して感じたことを3つのテーマに分けて提言書を作成しました。その一つが高校生同士の横の連携の大切さで、これをきっかけに翌年に高校生連携協議会が発足しました。私自身は、高校生連携協議会に対するオファーを監査する立場として高校生連携協議会との関わりを続けることとし、その後仙台七夕花火祭の大山特別委員長に対して、高校生連携協議会が活躍できる場を相談したところ、本部前テントのイベントを高校生連携協議会が企画・運営することになり、そこから現在まで仙台JCとの繋がりが続いています。

 

〇3.11キャンドルナイトを引き継いだ当時の高校生たちの役割について

当時からジュニアJCを意識して、大人と変わらずに高校生には事業目的をしっかりと伝え、それに対しての想いをテーマ(スローガン)としてみんなで議論していました。今でもそうですが、キャンドルナイトでは、テーマ決めに約2~3カ月の時間を掛けます。漠然としたテーマから、どんどん煮詰められ、それと同時に余分なものがそぎ落とされシンプルになります。誰が見ても、聞いても共通の認識を持てるようにすることを主軸において考えていただいております。その後はテーマをどのように効果的に発信していくかの調査研究を行い、事業内容のほぼすべてを高校生たちが企画、運営しております。

 

〇高校生同士の意見対立やモチベーションの低下など、運営上の問題はなかったでしょうか。またどのように解決してきたのでしょうか。

高校生の皆さんは素直な子が本当に多く、背景目的手法ということをすぐに理解し、自ら考え自ら行動してくれます。わからないことがあればわからないとすぐに聞いてくれるし、盛り上がっているときはただ見守り、元気がないときには盛り上げるように促すようにして、私たちはなるべく直接手をかけないように心がけています。そうすると、高校生たちは、自ら課題に向き合って進んでいく様子を間近で見ることができ、本当にすごいと感じるとともに、刺激をもらっています。

 

〇高校生連携協議会が主体となることで、キャンドルナイトの企画・運営にどのような変化がありましたか。

高校生たちが企画・運営することで、世の中の人たちの関心度が大きく変わったように思います。高校生たちが活動していることで、メディアに大きく取り上げられたり、仙台市自らが広報してくれたりと、世の中への影響力がとても大きくなったと感じます。

 

〇高校生たちの成長や変化を実感したエピソードがあれば教えてください。

皆さんとても素直な子が多く、背景・目的・手法をすぐに理解して、自ら考え行動に移していく姿が日に日に頼もしくなります。それと、進学で推薦を受ける方は必ずと言っていいほど、キャンドルナイトをはじめ、高校生連携協議会の活動について質問されるそうですが皆さんしっかりとその内容を話されるので、面接官は皆さん感心されているそうです。

 

〇キャンドルナイトの引き継いだ当時と比べ、現在どのような変化を感じますか。

 震災を知らない世代の子たちが増えているように感じています。だからこそ、3.11キャンドルナイトを継続していかなければならないと思いますし、どういうカタチでもいいので一人でも多くの方に参加していただき、防災減災に繋がる未来を創っていきたいと思います。

 

〇今後の展望をお聞かせください。

 理想は、高校生連携協議会に所属し、3.11キャンドルナイトに携わった高校生たちが、大人になってこの事業を引き継いでくれることを心から期待しています。

【現役JCと市民の方々へのメッセージ】

子どもたちが地域に関心を持ち、課題を見つけ自ら解決していくことがこれからの社会ではとても重要なことだと思います。そのためにも私たちが仙台JCで学んだことや経験したことを通じて、子どもたちに様々な機会の提供ができればと考えておりますので、引き続きご協力の程何卒、宜しくお願い致します。

 

<高校生連携協議会>

〇現在の活動を教えてください。

 末永あんなさん:来年の3.11キャンドルナイトのテーマに関する協議が8月から始まります。今年の3.11キャンドルナイトは、宣伝を大きくしていきたいといった方向性についての議論に少しずつ取り組んでいる状況です。現在は、青葉まつりのボランティア活動等を中心に行っています。

 

〇高校生連携協議会に入られたきっかけを教えてください。

 平塚はるなさん:同じ部活の先輩から、キャンドルナイトの日に誘われ、当日参加してみたらとても楽しく、輝いている先輩たちのように活動していきたいと考え、高校1年生から参加しました。

 

〇2025年の3.11キャンドルナイトをどのようにしていきたいですか。

 佐藤みなみさん:東日本大震災で起きたことを無駄にしないように、防災・減災のための知恵を、多くの人に伝えたい、伝えられるイベントにしたいと考えています。

 

 

 仙台JCが始動した3.11キャンドルナイトの火は、仙台JCの先輩方が起こした行動から、仙台市内の高校生たちに脈々と受け継がれ、未来への光を灯し続けている。